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予防接種

Vaccination

予防接種|新所沢駅(東口) 小児科 | まつば小児科

Vaccination

予防接種

予防接種とは

予防接種(=ワクチン)とは、生命予後の悪い、または重篤な合併症をきたしうる感染症に対し、病原体の成分を事前に投与することで、その感染症への免疫を誘導する医療行為です。小児科で扱うワクチンは多岐に渡り、スケジュールは煩雑化しています。

定期予防接種

ロタウイルス(生ワクチン;経口)

乳幼児の急性胃腸炎の代表的な原因ウイルスです。嘔吐や白色水様便が主症状で、脱水や肝腎機能障害を来たし入院加療を要する例もあります。急性脳症の併発も懸念されます。
ワクチン導入前は世界で年間50万人の乳幼児が亡くなっており、国内でも2011年に任意接種が始まるまで年間十数名の死亡例が報告されていました。ワクチン効果が認められ、2020年に定期接種化されています。

B型肝炎ウイルス(不活化ワクチン)

感染児の10〜15%は慢性肝炎に至り、肝硬変、肝癌へと進行します。小児科ではB型肝炎キャリアー母体から出生した児への垂直感染予防事業が1986年に始まり、対象児に限定してワクチン接種が行われてきました。水平感染は血液や体液を介した経路が主と考えられていましたが、2002年に保育園での集団感染、2009年に祖父、孫、父の3世代に渡る家族内感染例が報告されるなど、従来認識されていたより水平感染の機会が多いことが明らかとなり、2016年に定期接種化されています。

四種混合(不活化ワクチン)

ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオに対するワクチンです。
ジフテリアは、発熱や咽頭痛で発症し、気道狭窄から呼吸困難に陥ります。海外では近年もワクチン接種率の低い地域で散発的に死者が出ています。
百日咳は、風邪症状から次第に激しい咳、呼吸困難、無呼吸を来たします。生後6か月未満の発症例は重篤な経過をたどりやすく、致死率も高いです。
破傷風は土壌に潜む破傷風菌が、外傷や動物咬傷を通じて体内へ侵入し、菌の産生する毒素により喉や呼吸筋が痙攣して呼吸困難に陥ります。
ポリオは弛緩性四肢麻痺や髄膜炎などを引き起こし、延髄の呼吸中枢が障害され死に至ることもあります。

ヒブ(不活化ワクチン)

ヒブ(Hib)はインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b)の略称で、かつては生後8か月をピークとした5歳未満の乳幼児に重篤な髄膜炎や喉頭蓋炎を引き起こしていました。2008年に国内の小児Hib髄膜炎新規患者は443人と推計され、海外で実績のあったHibワクチンの任意接種が始まりました。その後感染者の減少が明らかとなり、2013年に定期接種化されています。

肺炎球菌(不活化ワクチン)

2歳未満の乳幼児を中心に、侵襲性感染症(血液や髄液など本来無菌である部位から菌が検出される病態)として髄膜炎、敗血症、肺炎などを引き起こします。高病原性かつ検出率の高い7種の血清型を対象とした7価ワクチンの任意接種が2010年に開始され、重症例は激減しました。その後ワクチンでカバーされない血清型の割合が増し、新たに6種の血清型を対象に加えた13価ワクチンが2013年に定期接種化されています。

BCG(生ワクチン;注射)

国内の結核の新規登録数は2019年が14460人、うち14歳以下は38人で、欧米に比し数倍高い状況です。
BCG接種後10日から4週の間に、針痕に一致して発赤、膿疱などが出現し、やがて痂皮化するのが一般的ですが、これらの変化が数日以内に早まって見られる場合に(コッホ現象)、精査が必要となることがあります。

MR(生ワクチン;注射)

麻しん(Measles)と風しん(Rubella)の混合ワクチンです。
麻しんは、熱、咳、鼻水、結膜炎(眼の充血、目やに)等の症状で発症します。2〜3日後に一旦解熱しかけますが、すぐ高熱に戻り、耳の後ろから皮疹が出始めます。皮疹は1〜2日で全身へ拡大し、この頃に気道症状も増悪します。免疫を持たない乳幼児は空気感染し、ほぼ100%顕性発症して重篤な経過を辿ります。
風しんは発熱、皮疹、耳後リンパ節腫脹等を呈します。症状は麻疹ほど重篤ではありませんが、妊婦が妊娠20週までに風疹に感染した場合、胎児に様々な後遺症を来たすことがあります(先天性風しん症候群)。

水痘(生ワクチン;注射)

発熱や皮疹で発症します。病初期は小豆大の紅斑が散在性に出現し、次第に丘疹、水疱、膿疱、びらん、痂皮化して脱落していきます。ピーク時にはこれらの皮疹が入り混じり、その数は数百個に及びます。稀に、紫斑病、肺炎、髄膜脳炎を合併します。水痘や帯状疱疹の患者から空気感染し、国内ではかつて小児を中心に例年100万人が罹患していました。予防接種の対象の中で最も死亡報告の多い感染症であり、2014年に定期接種化されています。

日本脳炎(不活化ワクチン)

日本脳炎ウイルスは、豚の体内で増殖し、蚊が媒介して最終的にヒトに感染します。感染者の一部は髄膜脳炎や脊髄炎を来たし、致死率2〜4割、また生存者の5〜7割に後遺症を残します。豚の調査により、近年も西日本を中心に広い地域で日本脳炎ウイルスの存在が確認されており、2015年には生後10か月の感染例が報告されています。蚊の活動が始まる夏前に少なくとも初回接種を完了することが望まれます。

HPV(不活化ワクチン)

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性交渉を通じて子宮頸部の粘膜に感染し、稀に子宮頸癌の発生母地となります。近年20〜30代の子宮頸癌の患者が増加しており、多くの女性が本ワクチンによりHPV感染を予防する意義があります。
2013年4月に定期接種化されましたが、副反応のため同年6月に積極的な勧奨が差し控えられていました。海外からの知見の蓄積等により、積極的な勧奨の再開が妥当であると判断され、2022年4月から個別勧奨が開始されています。

また、差し控え期間に定期接種を見送った1997年〜2006年生まれの女性のキャッチアップ接種が、2025年3月まで公費扱いになります。

任意予防接種

おたふく(生ワクチン;注射)

唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)の腫脹、圧痛で発症します。急性期は発熱を伴うこともあります。発症して5日経過する頃までは唾液中にウイルスが排泄されるため、学校保険安全法でこの間の出席停止が課せられています。
回復後1か月以内に好発する難聴は、国内で年間700〜2300例の新規発生が推計されています。2015〜2016年に行われた全国調査では、発症者の95%は聴力の回復が認められず、最も警戒すべき合併症です。また、思春期以降に初感染した男児の2〜4割が精巣炎を合併し、睾丸萎縮や精子数の減少を来たします。髄膜炎や膵炎も頻度の高い合併症です。

三種混合(不活化ワクチン)

2012年に定期接種となった四種混合ワクチンの前身で、ポリオ以外をカバーします。今般このワクチンが脚光を浴びているのは、百日咳の追加免疫が付与できることにあります。定期接種完了後の成人の百日咳集団感染や、家庭内での同居者から乳児への水平感染例が報告されている一方で、欧米では10代の三種混合ワクチン接種により、10代以上の百日咳患者の減少とともに、乳児感染例の減少も間接効果として見られています。国内でも二種混合ワクチンの代わりに三種混合ワクチンを用いるかの検討がなされています。日本小児科学会は、就学前頃から多くの児で百日咳抗体価が低下し感染しやすくなっている現状を鑑み、5〜7歳での三種混合ワクチンの追加接種を推奨しています。

インフルエンザ(不活化ワクチン)

インフルエンザウイルスは抗原性の違いでA〜D型に大別され、そのうちA、B型が冬季に流行します。ウイルス表面の標的抗原(赤血球凝集素(H; Hemagglutinin)、ノイラミニダーゼ(N; Neuraminidase))の組み合わせで、A型は更に198種類の異なる抗原性を有し、鳥や豚等の多宿主に分布しています。2009年にパンデミックを来したA(H1N1)pdm09のほか、香港型A(H3N2)、B型の3種類が例年流行し、人類と共存に近い関係を保っています。
インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスへの感染や発症そのものを完全に抑止することはできませんが、重症化や合併症の発生を予防する効果が証明されています。生後6か月から13歳未満の児は、2〜4週の間でなるべく間隔をあけて2回接種します。

その他

新型コロナウイルス(mRNAワクチン;ファイザー社製)

新型コロナウイルス感染症は2019年末に中国河北省武漢市に端を発し、2022年4月現在、国内でもオミクロン株による流行が続いています。オミクロン株は従来株より潜伏期が短く(中央値2.9日)、鼻症状や咽頭痛などの感冒様症状の頻度が多く、嗅覚・味覚障害の頻度が少ないことが報告されています。
本ワクチンは国内で2021年2月に12歳以上に、2022年1月に5〜11歳に適応が拡大され、また2022年4月から12〜17歳の3回目接種が開始されました(5〜11歳は2回接種)。3週間の間隔で2回、2回目から6か月以上あけて3回目を接種します。なお、前後に他のワクチンを受ける場合は13日以上あけます。
2回目を接種してから7日程度で十分な免疫が得られ、またオミクロン株に対しても重症化を防ぐ効果が期待されています。国際臨床試験において、小児のワクチン接種に伴う副反応、有効性はいずれも成人と同様であることが確認されています。